Lesson 3:練習計画を立てよう

前半は走力アップに重点 まず心肺機能を鍛える

目標タイムを掲げフルマラソンを走り抜くには、それなりの練習量が必要。
特に3時間台(サブフォー)が目標のランナーの皆さん、
秋冬に向け長期的な計画を立てませんか。
ランナーのトレーニング管理をしているアシックススポーツ工学研究所(神戸市西区)運動能力開発チームマネジャーの田川武弘さん(46)に、ポイントを教わりました。
(鎌田倫子)

全身の持久力を支えるのは、呼吸を担う肺、酸素と二酸化炭素を運ぶ心臓、
筋肉(脚力)―の三つ。
心肺機能も鍛える必要があるが、多くのランナーは毎月の走り込みの距離を気にしがち。
完走だけならいいが、自己ベストを目指す人にとって、距離だけにとらわれた練習は
回り道だ。

トレーニングに励むランナー。
秋のシーズン到来までは長丁場。
計画立てて臨もう=西宮市、武庫川河川敷

効率的な走り

「人の体を乗用車に例えると、エンジンとなるのが心臓と肺、脚力はタイヤ。
小さいエンジンではペースは上がらす、記録は望めません」
目安となるのが無酸素性作業閾(いき)値(AT)。
例えば、ランニングマシンで走行中、快適なジョギングからスピードを上げていくと、次第に苦しさが増す。
運動の強度が上がると、肺から取り込んだ酸素を利用して生み出すエネルギーだけで足りず、無酸素下でエネルギーを作る無酸素運動へと切り替わるからだ。
この時点がATだ。
ATを超えるほど、50メートルや100メートルを全力疾走する状態に近くなり、とても持続できないが、AT以下なら長時間同じペースを維持できる。
「最初から最後までATで走り切るのが最も効率的」
車でいうならエンジン性能にあたるATは、年齢や普段の運動量で人によって異なる。
初心者ならば「楽に感じる速さ」、サブフォーを狙う人は「ジョギングよりも速く、ずっと走れそうなペース」、上級者は「快適とややきついの中間くらい」を目安にしよう。

軽から中型に

トレーニング期間は6カ月が標準。
遅くとも20週前からスタートしよう。
多くの人は距離への不安を克服しようとして、ペースを上げた練習を後回しにしがち。
これでは結果的にスピード練習が足りなくなり、タイムを思うように伸ばせない。
「早い段階でATを上げるトレーニングが必要。軽自動車から中型車に体を変えましょう。
速いペースで走って負荷をかけるとATは向上します」

  • 準備期間(1~3週)=体を慣らす。ATペースで無理をしない。
  • 走力アップ期(4~11週)=AT向上が目的。週2回はやや短い距離(目標がサブフォーなら8キロ程度)をATより速いペースで走る。週末はゆっくり長い距離(同12キロ以上)を。
  • 走り込み期(12~17週)=脚力を養うため、長く走る練習を重視。
  • 調整期(18~20週)=疲れを取り、体調のピークをレースにもっていく。

「週に何日かは完全休養日を設けること。緩急をつけ練習を」

〈トレーニングメモ〉
サブフォーを目標に

心拍数が上がりしんどい。
残り2キロを過ぎると、横隔膜辺りが苦しいと感じるが、同じペースを守る。記者のATは1キロ約5分30秒。
5分を少し切るようなペースを意識しながら8キロ走を週2回。
そんなトレーニングを自分に課している。
目標があった方が張り合いが出るのは、仕事もマラソンも同じ。
記者の場合、掲げたのは「初マラソンでサブフォー」だった。
4時間以内の女性の完走は、市民マラソンでは1~2割という。
容易ではないとすぐに悟った。
脚の疲労は翌日に残り、筋トレは面倒くさい上につらく、プロテインの味は微妙。
それでも2カ月続けるうちに、8キロ走のタイムは約1分縮まり、体重も減少傾向に。
30代でも頑張れば、知らなかった世界をのぞける。
苦しいが、漫然と走るよりずっといい。

(神戸新聞2011年6月15日掲載)


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